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【WAR(闘)】U2

14 3月

世界を変えるリアルロック

war_u2音楽巴塾も最終回を迎えた。三者三様の独自レビューを1年に渡り書いてきたが、ラストには最も精神的に影響を受けたバンドの中から紹介したい。

そのバンドはU2。The Policeと並び思春期に多大なイマジネーションを湧かせてくれたロックだ。

秀作ばかりのU2の中でも衝撃的な初期時のアルバムを取り上げる。

U2

『WAR(闘)』

リリース1983.2.28

■”パンク”というロック界のセカンドインパクト

80年代前半、ロックのミュージックシーンは、嵐の如く席巻し瞬く間に通り過ぎたパンク台風の台風一過、ある種空虚な世界に支配されていたのかもしれない。60年代のビートルズから始まるロック誕生から10年間、ありとあらゆるロックバンドが誕生し進化し続けた。しかしロックミュージックが浸透し大衆性ウケを狙った商業的な側面が色濃くなるにつれ、ロック特有の衝動やエネルギーは薄らいでいったと言ってもいいだろう。そんな70年代半ば、言いたいことを等身大で叫ぶパンクロックのムーブメントがシーンにインパクトを与える。エヴァ風に言うならビートルズがジャイアントインパクトでパンクの衝動がセカンドインパクトといったところか。

この英国から大々的に発信されたパンクロック。荒々しい音と退廃的で衝動的なその音楽性のひな形は、実は60年代末期のニューヨークのアンダーグラウンドで確立されていたロックである。いわゆる輸入でありリバイバル的なもので英国オリジナルではない。そうブルースやヒルビリーが英国でロックに生まれ変わるのと同じなのだ。

そんなロック界の “セカンドインパクト” は、凄まじい “熱” を持っていたのにも関わらずセックスピストルズの解散と共に短時間で過ぎてしまう。しかしこれはあくまで表面的にそう見えるだけで、この”セカンドインパクト” がもたらした影響は大きい。この凄まじい “熱” は、現在当たり前のようにジャンルになっているオルタナティブロック(本来は王道に対するマイノリティーでコアなバンドたちのロック)やニューウェーヴという新たな思想や音楽性を持ったアーティストを多く生み出すキッカケとなり、細々だが強く燃え盛り、若者達の自己表現を極めるための表現方法としてのリアルなロックの道を切り開くこととなる。

この台風一過の後、ロックのメインストリームは、70年代末にはパンクの反動か一気にお洒落なサウンドが世界的なシーンを包み込みダンス/ディスコミュージックやクロスオーヴァー/フュージョン、米国ではAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)などの商業的大衆向けロック、英国ではテクノに移行する。いわゆるギターロックは完全にアンダーグラウンドになってしまったのである。

そして迎える80年代、時代はロックの産業化が進みロックはポップに完全に呑み込まれていた。(その最たる例がマイケル・ジャクソンのモンスターアルバム『スリラー(1982)』である)こんな中、前述の “セカンドインパクト” 世代である自分達の想いを音楽で表現したいという等身大の若者達の1つが今回スポットをあてるU2である。

■U2

この時代のバンドにはユニークで芸術性やエネルギーがあるバンドが多く、独創性に富んでるバンドも多い。今回、音楽巴塾のラストにはザ・ポリスの『シンクロニシティー』で行く予定で途中まで書き上げたが、今の時代背景を考えたら『WAR(闘)』の持つメッセージ性やロック魂の方がマッチしていて是非伝えたいとおもい差し替えた。

U2は1980年にデビューしたアイルランドはダブリン出身の、今や世界的ビッグネームのバンドだ。イギリスではなくその横の人口500万人に満たない小国アイルランド。その根底には歴史的背景から反英感情が根付いている国である。この小国は数多くの有名アーティストを輩出している。ヴァン・モリソン、ロリー・ギャラガー、ザ・コアーズ、フィル・ライノット(シン・リジィ)など。俳優のコリン・ファレルもアイルランド出身だ。

今回のアルバムを含むU2の初期3部作は、荒削りで大胆なサウンドだが当時のポストパンクバンドより遥かにシャープでタイトなリズムセクションとボノの上手くはないが躍動感ある歌唱が既に存在感を醸し出している。また社会問題に面と向かって向き合った歌詞で他のロックバンドより内容も重く、粗さとタイトなサウンドの中にも独特の音空間を創り凄まじいエネルギーを放っていた。もちろん30年経った今聴いてもそのエナジーは異彩を放っている。これは初期3部のプロデューサー、スティーブ・リリーホワイトの功績が大きいこととイギリスへ渡らずダブリンを拠点に制作していたことが大きい。

このアルバム以降、プロデューサーにブライアン・イーノとダニエル・ラノワを迎えU2が世界のトップアーティストへ成長を遂げるアルバム『ヨシュア・トゥリー(1987)』や『アクトン・ベイビー(1991)』などの超名盤をリリースしていくこととなる。だが、今回はあえて3rdアルバム『WAR』を取り上げる。理由は簡単。閉塞した社会に風穴を開けるエネルギーがU2のアルバム中最もあるからだ。いい意味で張りつめた緊張感と脆さや危うさが同居したケミストリーがそこに存在しているのである。

■アルバム『WAR(闘)』

実はこの3rdアルバム制作の前、バンドメンバーは音楽の道ではなく、自己表現のための別の道を模索していた。ポップな音楽が嫌いで反骨精神が強かった結成当初のバンドは若さ故のエネルギーと共にニューウェーブ的オルタナティヴな1st『ボーイ』、2nd『アイリッシュ・オクトーバー』をリリースする。エネルギッシュなライヴパフォーマンスが話題となりファンを増やしてはいたが、決定的にブレイクとまではいかない。そんな中で彼らは自らに問う。「社会とのコミットはロックではなく他にあるのではないか?」と。バンドはそんな精神的不安定な中、今作『WAR(闘)』を制作する。そんなバックボーンがこのアルバムの持つ緊張感と危うさなのだ。まさにアルバムタイトルの通り。またメンバー間の対立や緊張感からくる異常なテンションが名盤を生み出すことはロックバンドにはよくあることだ。同時期のザ・ポリスの『シンクロニシティー』もそうだ。ポリスの場合はその後緊張の糸が切れ散開してしまうが。

ボーカルのボノはこのアルバム『WAR(闘)』を「色々なレベルにある『戦い』を扱ったものなんだ。国と国の戦いもあれば、市民権の戦いもある。人と人同士の戦いもあるんだ。勿論、男女間の戦いもね。確かに『戦い』がテーマだけど、決して否定的なアルバムなんかじゃないんだ」と言っている。

続く。。

by タバチン
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投稿者: : 2013年3月14日 投稿先 3.Rock(ロック)

 

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