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ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン / ヘレン・メリル

10 1月

ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン / ヘレン・メリル
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 茶道に「一期一会」という言葉がある。よく知られているとおり、「一生に一度だけの機会」という意味合いの言葉であり、茶会に臨む際の主客互いの心得とされている。二度とないこの機会に感謝し、その時間を大切にする心模様が伺える。 

 しかし、これは茶の湯の場に留まらず様々な世界で共通することは、今さら私がいうほどのことでもなかろう。音楽の世界もまたしかり。今回紹介するのは、そんな奇跡的な一期一会といえる一枚のアルバム「ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン」。

 タイトルが示すとおり、このアルバムの主役はボーカリストのヘレン・メリルであり、重要度の高い奏者としてそこに並び称されるトランペッターのクリフォード・ブラウンがいるわけだが、実はもう一人欠くことのできない人物がいる。本作の全編に渡って編曲を担当したクインシー・ジョーンズがその人だ。この3人が揃ったからこそ、世に語り継がれる名盤となった…といっても過言ではなかろう。

 クインシーは1950年代から現在まで第一線で活躍を続け、グラミー賞をはじめとする音楽賞を多数受賞している作曲家兼音楽プロデューサー。日本ではヒット曲「愛のコリーダ」(1981年)で有名だが、それ以外にも日本人に馴染み深い話がある。

 宮崎駿作品で知られるスタジオジブリ映画や北野武監督の映画など、数多の映像作品の音楽を手がける作曲家・久石譲(ひさいしじょう)氏。彼の名前は「クイシジョウ」とも読めるわけだが、これはクインシー・ジョーンズをもじってペンネームにしたというのだ。久石氏のクインシーに対する想いが感じられる、いいエピソードである。

 閑話休題。話を本アルバムに戻す。

 この作品録音時の3人の年齢はというと、ヘレン24歳、ブラウニー24歳、クインシー21歳。ブラウニーとクインシーの起用はヘレン自身からの指名とのことなのだが、まぁ3人ともなんという若さであろうか。

 ヘレンのハスキーでメローな歌声、ブラウニーの甘くなり過ぎない引き締まった吹奏、クインシーの細部にまで細やかに配慮された編曲。この3人の絶妙な組み合わせを考えたヘレンのセンスには舌を巻く。

 現在から考えればビッグネームの3人だが、当時はまだ新人でビッグには程遠い存在。それを併せて考えると、なんとも奇跡的な、そう「一期一会」の録音なのである。

<#1.ドント・エクスプレイン>
 女性ジャズボーカル界の巨人・ビリー・ホリデイによる1946年の作品。アルバム1曲目からいきなりスローテンポで切々を歌い上げるヘレン。きらびやかなピアノのイントロが印象的だ。浮気がばれてしどろもどろしている男に「言い訳はしないで。私には貴方しかいないの」と切なく歌いかける歌詞で、ヘレンの低い声がジャストマッチ。間奏のブラウニーの音に言い訳じみた男が重なる。

<#2.ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ >
 コール・ポーターの作詞作曲で、「帰ってくれれば嬉しいわ」という日本題がつくスタンダード・ナンバー。この曲のもっとも代表的な歌唱として有名だ。まずはイントロ。もうこれしか無いというほどハマったアレンジメント。そのあとにヘレンの纏わりつくようなボーカル。そしてぱりっとしたクリスピーなブラウニーのソロ。文句の付け所がない。

<#3.ホワッツ・ニュー>
 元は歌詞がなく、器楽演奏用として書かれた作品。「久しぶり、お変わりない?」という意味の歌詞は、偶然会った昔の恋人同士が醸し出す独特の雰囲気を表現した曲。24歳とは思えない老練したヘレンの歌唱にぐっとくる。

<#4.フォーリン・イン・ラブ・ウィズ・ラブ>
 「恋に恋して」の邦題で有名なミディアムテンポのラブソング。ヘレンのボーカルに絡むように書かれたトランペットとバリトンサックス、そしてギターが効いていて、これぞ編曲の妙である。

<#5.イエスタデイズ>
 ブラウニーの印象的なイントロで始まるスタンダード曲。過ぎ去った若かりし日々を、ヘレンが切なく歌い上げる…といってもこの録音時まだ24歳のヘレン。。

<#6.ボーン・トゥ・ビー・ブルー>
 男性ボーカリスト・メル・トーメの作品。「ブルーになるために生まれてきた」とはなんと暗くなるタイトルだろう。そんな題名にもかかわらず、ほんの少しながら明るさの差す曲でもあるのがメル・トーメっぽさか。ヘレンにはこんなスローな曲が合う。

<#7.スワンダフル>
 1927年のミュージカル「Funny face」に挿入使用されたガーシュイン兄弟によるナンバー。本アルバム中で最も速いテンポ設定の曲である。「素敵。なんて素晴らしいことなの。あなたが私のことを好きだなんて」と恋のときめきを歌う。

 ヘレン・メリルのことを「ニューヨークのため息」と言いだしたのは誰なのであろうか。彼女は確かにニューヨーク生まれだそうだが、しっとりとしたセクシーなイメージが漂うこの言葉は、売り出す際のキャッチフレーズであったとしても、なんともうまい。

 奇跡の一期一会。今回何度も使用したこの言葉も大げさに聞こえないほどに魅力を放つ1954年作品。そこにニューヨークのため息が聴こえるかどうか、ぜひ貴方の耳で確かめてほしい…。

 [ライター:三森勝仁(KatsuhitoWeb)]

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Helen Merrill with Clifford Brown / Helen Merrill (Emarcy)

 1.Don’t Explain (Billie Holiday)
 2.You’d Be So Nice To Come Home To (Cole Porter)
 3.What’s New? (Bob Haggart, Johnny Burke)
 4.Falling In Love With Love (Richard Rodgers, Lorenz hart)
 5.Yesterdays (Jerome Kern, Otto Harbach)
 6.Born To Be Blue (Mel Torme, Robert Wells)
 7.’S Wonderful (George Gershwin, Ira Gershwin)

  ・Helen Merrill : Vocals
  ・Clifford Brown : Trumpet
  ・Donny Bank : Flute,Bass Clarinet,Baritone Saxophone (#1,2,4,5,6,7)
  ・Barry Galbraith : Guitar
  ・Jimmy Jones : Piano
  ・Milt Hinton : Bass (#1,2,6,7)
  ・Oscar Pettiford : Bass&cello (#3,4,5)
  ・Osie Johnson : Drums (#1,2,6,7)
  ・Bob Donaldson : Drums (#3,4,5)
  ・Quincy Jones : Arrange

                    [Recording Date 1954.12.22(#1,2,6,7), 1954.12.25(#3,4,5)]

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投稿者: : 2013年1月10日 投稿先 2.Jazz(ジャズ)

 

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