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アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション / アート・ペッパー

12 11月

アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション / アート・ペッパー
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 ジャズ・ミュージックは1900年代初頭のアメリカ・ニューオリンズで誕生した。その起源については諸説あるが、この地の黒人が演奏していたブラス・バンドやマーチング・バンドが発展したもの…というところのようだ。そのため主に黒人ミュージシャンの中へ浸透し、華開いていく。1930年代にはスイング・ジャズのブームを形づくる白人ジャズ・ミュージシャンが現れ、流行音楽として大きなムーブメントを形成していく。 

 1940年代のビ・バップという大きなうねりのあと、1950年代になるとニューヨークを中心に黒人ジャズマンが主導するイースト・コースト・ジャズ(ハード・バップ)と、ロス・アンジェルスを中心に白人ジャズマンが活躍するウエスト・コースト・ジャズ(クール・ジャズ)の時代が訪れる。今回紹介する一枚は、この東西を代表するジャズ・ミュージシャンががっぷり四つに組んだアルバム「アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション」である。

 主人公であるアート・ペッパーはアルトサックス奏者。LAジャズ界では押しも押されぬ立場であったが、自身の麻薬が原因で自業自得ながらも不遇の時代を送っていた。そのLAにマイルス・デイビス・クインテットが演奏旅行で訪れ、そのメンバーであるレッド・ガーランド(P)、ポール・チェンバース(B)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(Dr)という強力なリズム・セクションとペッパーとのレコーディングが企画されたのだ。体調が思わしくなかったペッパーは、このレコーディングをすっぽかそうとしていたそうで、そんな中で吹きこまれた作品がジャズ史における傑作として後世に残るのだから、まぁ世の中は面白いものだ。

 まず、本当にリズムがかっちりとしていることに関心する。さすがに当時ナンバーワンとの呼び声も高い「ザ・リズム・セクション」である。その神輿に乗るペッパーはというと、彼自身の最高傑作ともいわれるこれまた見事な吹奏を聴かせる。朝からの体調の悪さを麻薬でやり込めたことが良いほうに影響したのか、ここで聴かれるペッパーの心揺さぶられる好演は、その体調不良を微塵も感じさせない。

<#1.ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ>
 コール・ポーターの作詞作曲としてあまりにも有名なスタンダード・ナンバー。この曲の名演といえばこのアルバムが上がるほどに有名な代表的演奏である。魅力を語れば尽きないが、まずはペッパーの伸びやかなアルトに耳が惹きつけられる。体調不良であったという話が嘘のような音色とフレージングに酔いしれる。

<#2. レッド・ペッパー・ブルース>
 レッド・ガーランド作曲のブルース。シンプルなテーマのあと、エモーショナルなペッパーのソロが展開される。エンディングのアレンジが作り込まれていて印象的だ。

<#3. イマジネーション>
 ジミー・ヴァン・ヒューゼン作曲のミディアム・テンポの小品。4人の奏でる音から暖かな雰囲気が伝わってくる。それにしてもペッパーの艶やかな音使いのなんたる色気。

<#4. ワルツ・ミー・ブルース>
 ペッパーとチェンバースの共作による、3拍子のワルツで書かれた珍しい曲。レコーディング・スタジオのその場でなんとなく出来た曲なのであろうと想像する。

<#5. ストレート・ライフ>
 一転して超高速で演奏されるペッパーの自作曲。ここで聴かれるペッパーの演奏からは、伸縮に富むバネのような瞬発力が感じられ、なんとも胸のすく快演である。このテンポの中でチェンバースはアルコ(弓弾き)でソロを取る。後半の4バースが熱い。このテイクこそ本アルバム中の白眉といえよう。

<#6. ジャズ・ミー・ブルース>
 軽快なテンポで演奏されるデキシーランド・ジャズの名曲。所々に入るブレイクが、この曲のアクセントになっている。

<#7. ティン・ティン・デオ>
 アフロ・キューバンな8ビートが顔を出すエスニックなナンバー。本アルバム中でも異彩を放つ選曲で、この作品の中のアクセントになっていて面白い。こういうリズムを叩かせたら、もうそこはフィリー・ジョーの独壇場だ。

<#8. スター・アイズ>
 有名なスタンダード曲。軽快なリズムに乗り、4人が一体となってスイングするさまは殊に気持ちがいい。チェンバースがソロで見せるアルコの切れ味はさすがだ。

<#9. バークス・ワークス>
 ディジー・ガレスピー作曲のマイナーな曲調のミディアム・テンポ・ナンバー。ガーランドの粘っこいピアノ・ソロも聴きもの。

<#10. ザ・マン・アイ・ラヴ>
 元はブロードウェイ・ミュージカル用にジョージ・ガーシュインが作曲し、のちにスタンダード・ナンバーとなった曲。LPには未収録で、CDではボーナストラックとなっている。オープニングのフィリー・ジョーの切れ味鋭いブラシワークが雰囲気を盛り上げる。軽やかなソロの随所にペッパー節が炸裂し、ガーランドのピアノがスイングしまくる。こんなにいいテイクがLP未収録だったとはあまりに勿体ない。

 本アルバムは様々に語られる逸話が多い。「マイルスのリズムセクションに恐れを成したペッパーは、虎の待つ檻に入るような心境でレコーディング・スタジオに向かった」…などがそれだ。しかし、のちにペッパーは「マイルスのリズムセクションと言われても、あまりピンとこなかった」と回顧している。事の真相はわからないしそれはまぁ置いておくとして、この作品で聴かれる見事な演奏を聴くと、そのようなことはどうでもよくなってくる。

 ペッパーは当日体調不良で、そしてリズムの3人と顔を合わるのは初めてであり、しかし録音できるのはたった一日で、しかもペッパーが遅れてスタジオ入りしたためにリハーサルはほとんど行われなかったという。そんなあらゆる悪条件が重なった中(ほとんどペッパーが悪いのだが…笑)で、ここまで聴き応えのあるアルバムが記録されたのだ。

 東西で活躍する白人と黒人のジャズマンが初共演…というと火花飛びかう丁々発止を想像するが、むしろ程よい緊張感の中でリラックスした肩のこらないながらも白熱のプレイが展開されている。そのあたりを考えて聴いてみると、いやはやなんとも奇跡の一期一会といえよう。ジャズの神様の気まぐれなほほ笑みに感謝せずにはいられない…。

 [ライター:三森勝仁(KatsuhitoWeb)]

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Art Pepper Meets The Rhythm Section / Art Pepper (Contemporary)

 1.You’d Be So Nice To Come Home To (Cole Porter)
 2.Red Pepper Blues (Red Garland)
 3.Imagination (Jimmy Van Heusen, Johnny Burke)
 4.Waltz Me Blues (Art Pepper, Paul Chambers)
 5.Straight Life (Art Pepper)
 6.Jazz Me Blues (Tom Delaney)
 7.Tin Tin Deo (Chano Pozo)
 8.Star Eyes (Gene DePaul, Don Raye)
 9.Birks Works (Dizzy Gillespie)
 10.The Man I Love (George Gershwin, Ira Gershwin)

  ・Alto Saxophone : Art Pepper
  ・Piano : Red Garland
  ・Bass : Paul Chambers
  ・Drums : Philly Joe Jones
                         [Recording Date 1957.01.19]

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1件のコメント

投稿者: : 2012年11月12日 投稿先 2.Jazz(ジャズ)

 

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