RSS

インクレディブル・ジャズ・ギター / ウエス・モンゴメリー

11 10月

インクレディブル・ジャズ・ギター / ウエス・モンゴメリー
» インクレディブル・ジャズ・ギター / ウエス・モンゴメリー

 何を隠そう…といっても実際には何も隠しているわけではないが…私はジャズ・ギターが好きだ。トランペットやサックスなどの管楽器に比すると押し出しが弱く、ピアノのようなオールマイティーさには欠け、ドラムスのような豪快さは持ち合わせていない。ジャズ・ギターとは一般的にはそんな存在と認識されているであろう。 

 ロックであればギター無しのバンドは考えがたく、ギターありきで存在しているといっても過言ではない。しかし、ジャズにおいてはグループの中にギターがいないことが多い…というか多くがギター無しのグループ編成というありさま。

 かくのごとく、ロックにおけるギターの役割とは対照的に、ジャズにおけるギターの立ち位置というのは微妙だ。クラシック・ギターも好んで聴く私だが、ジャズとクラシックの双方において、ギターの存在感は割と近いものがあるように感じられる。つまり、メインストリームになりづらいのだ。

 まぁそうはいいつつも、ジャズであってもクラシックであっても、ギターが重要な楽器であることに変わりはない。なんといっても、私はギターが奏でる音楽が好きなのだ。

 そんな私が今回紹介するジャズ・ギター・アルバムは、ウエス・モンゴメリーの「インクレディブル・ジャズ・ギター」。「Incredible」を辞書で引くと、「信じられない」や「驚くべき」とある。そう。「驚くべきジャズ・ギター」と自らで言い切ってしまう、なんとも高慢なタイトルを冠したアルバムなのである。

 ウエスはピックを使わず親指で弦を弾く。これにより、太くて逞しくありながらも繊細で美しい音を生み出している。また、右手の親指以外の指をギターのボディに沿わせるようにして安定させ、親指の自由な動きを可能にしている。さらに、1オクターヴ離れた同じ音を、一人の演奏家がユニゾンで演奏する「オクターヴ奏法」が得意なことも有名で、ウェスの名はオクターブ奏法の代名詞にもなっているほどである。

 …とまぁ奏法上のことをつらつら書いたが、聴く方にとってはあまり興味が無いかもしれない。しかし、これだけは覚えておいて損はないのだが、彼の特徴はまろやかで暖かな音色と歌心溢れるフレージングである。超絶技巧で演奏されるのだが、そうとは感じさせない心地良い雰囲気。これこそが彼の真骨頂といえよう。

<#1.エアジン>
 ソニー・ロリンズ作曲の人気ナンバー。複雑なコード進行の曲だが、それを感じさせずにフル・スロットルで駆けまわるウエス。巧みな指さばきが目に見えるようだ。4人の奏者が一体となって疾走するさまは、高速列車を思わせる快適さ。ちなみにAiregin(エアジン)は、Nigeria(ナイジェリア)を逆から綴った造語だ。

<#2.D-ナチュラル・ブルース>
 ウエス自身が作曲したブルース・ナンバー。ゆったりとしたテンポで自在に歌うウエスのギターに身を委ねて聴き入ってしまう。

<#3.ポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビームス>
 ジミー・ヴァン・ヒューゼン作曲のバラードナンバー。トミー・フラナガンの柔らかなタッチが心地いい前奏で既にノックアウト。それにつづくウエスの呟くようなテーマの間の取り方が絶妙である。

<#4.フォー・オン・シックス>
 ウエス自身の作曲で、ジャズ・ギター奏者にとっては避けては通れない定番曲。ウエスの持てる演奏技術をこれでもかと押し込んで、それでいながらも楽曲としてバランスを欠くこと無く、聴き応えのある完成度の高いテイクに仕上がっている。このアルバム中の白眉と言っていいであろう。

<#5.ウエスト・コースト・ブルース>
 ウエス自身が作曲したブルース・ナンバー。#2よりも軽快で、ミディアム・テンポになっている。ベースのパーシー、ドラムスのアルバートのヒース兄弟によるバッキングの安定感が冴える。

<#6.イン・ユア・オウン・スウィート・ウェイ>
 デイブ・ブルーベック作曲のバラード・ナンバー。スローなテンポの中にウエスならではの表現手法が網羅されていて、ブロック奏法も効果的に使われている。実に美しい演奏だ。

<#7.ミスター・ウォーカー>
 ウエス自身の作曲による8ビート・ナンバー。テーマのユニゾンが特徴的な楽曲。トミー・フラナガンのころころと転がるピアノが小気味よくスイングしている。

<#8.風と共に去りぬ>
 アリー・リューベル作曲のスタンダード・ナンバーで、小説「風と共に去りぬ」にインスパイアされて作られたと言われている。ミディアム・スロー・テンポのバラードを、ウエスは軽妙なスイング・ナンバーに仕上げている。

 本アルバムで聴かれるギターの音からすると、アンプはあまりいい状態ではないらしく、中低音が不足気味な感は歪めない。また、音のバランスもベストとは言いがたいように思われる。しかしそんなことは気にもかけず、体を揺らしながら笑顔で楽しそうに演奏するウエスの顔が浮かぶような、そんなレコーディング風景が音からにじみ出ている。この陽気さが、聴いているこちらの心を暖かくさせるのだ。

 ここまで書いてきて、私がジャズ・ギターを好きな理由のひとつが形を帯びてきた。まるでかたわらでぽつぽつと爪弾いているような、一緒にいる奏者や聴衆に寄り添うかのような、そんな身近で親しみやすい柔らかな空気を作り出す感じが殊に心地よいのだ。そう。私にとってギターは、そんな愛すべき楽器である…。

 [ライター:三森勝仁(KatsuhitoWeb)]

—————————————————————————————————-
The Incredible Jazz Guitar / Wes Montgomery (Riverside)

 1.Airegin (Sonny Rollins)
 2.D-Natural Blues (Wes Montgomery)
 3.Polka Dots And Moonbeams (Jimmy Van Heusen, James Van Heusen)
 4.Four On Six (Wes Montgomery)
 5.West Coast Blues (Wes Montgomery)
 6.In Your Own Sweet Way (Dave Brubeck)
 7.Mr Walker (Renie) (Wes Montgomery)
 8.Gone With The Wind (Allie Wrubel, Herb Magidson)

  ・Guitar : Wes Montgomery
  ・Piano : Tommy Flanagan
  ・Bass : Percy Heath
  ・Drums : Albert Heath
                         [Recording Date 1960.01.26, 1960.01.28]

インクレディブル・ジャズ・ギター / ウエス・モンゴメリー
» Amazonで詳しく見る

—————————————————————————————————-

広告
 
コメントする

投稿者: : 2012年10月11日 投稿先 2.Jazz(ジャズ)

 

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

 
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。