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【Tubular Bells】Mike Oldfield

10 7月

今回は純粋なロックじゃないけど70年代の名盤

tubular bells

Mike Oldfield / Tubular Bells(1973)

夏ですね〜。

当初、ピンクフロイドの「狂気」(1973)をご紹介する予定でしたが、ある場で今回のネタである「チューブラー・ベルズ」の話題がでたので、久しく聴いていないなと思いこれを取り上げることにしました。

聴くとちょうど涼しげになっていいかな(笑)

マイク・オールドフィールド

『チューブラー・ベルズ』

リリース1973.5.25

■アルバム『Tubular Bells』とは

マイク・オールドフィールドというイングランドのアーティストのソロデビューアルバム。折り曲がった金属パイプが宙に浮いているジャケットデザインが印象的。 タイトルの「チューブラー・ベルズ」とは、のど自慢等でキンコンカンとならすあの楽器のこと。 70年代初頭のイギリスのミュージックシーンはキング・クリムゾンはじめプログレッシブ・ロックとレッド・ツェッペリンなどのハードロックが主流な時代。1973年5月、本作は新しいプログレッシブ・ロックの形として新興のヴァージンレーベルよりリリースされた。

■アルバム概略

ロックというよりは、かなりイギリス臭い牧歌的なトラッドフォークが基調に。変拍子も多様しノンジャンルな実験音楽的な要素も強く、難解な作品に感じるかもしれないが、美しいメロディーがたくさん散りばめられた、間違いなく洋楽の歴史を動かした斬新な名盤。インストルメンタルで歌は入っていない。
この曲の冒頭部分は我々の世代以上には恐怖しか湧いてこない、あの名作オカルト映画「エクソシスト」(1973年公開)のテーマ曲でとても有名。映画のイメージが強過ぎて(英以外の)世界中のほとんどの人がエクソシストのためにこの曲が創られたと思い込んでいる。
実は、ワタクシ、SF映画は大好きなのですが、19歳までオカルト映画は大の苦手でほとんど観た記憶ががありません。それが功を奏してかこの曲に対してもあまり怖さがないのですね。いわゆるオカルトのイメージがない状態で高校の頃に初聴きしました。とても壮大で当時は受け止めることができなかったのですが、その後ピンクフロイドやイエス、ジェネシスなどプログレッシブロックの大作を聴き込んでいた時期にはかなりヘヴィーに聴きましたね。(ハマった理由は後述)

■斬新で画期的なアルバムの特徴

さて、このアルバムには画期的な特徴がいくつかあるので、曲の解説に行く前にご紹介しよう。

1.LPレコード片面ノンストップ
まず最大の特徴は、1973年5月のリリースの作品でポピュラーソングとして1枚のフルサイズのアルバムに2曲しかないこと。いや、厳密には「チューブラー・ベルズ」1曲だけ。これは誰も考えていなかった手法である。当時はアナログのレコードなのでA面B面に分割されてしまい「Side One(25分33秒)」「Side Two(23分17秒)」の2部構成になってしまった。CDメディアになってからはそれぞれが「Part1」「Part2」と呼ばれている。

2.ギネス並みの多重録音作品
この作品を創るのになんと2300回といわれる気が遠くなるほどのオーヴァーダビング(多重録音)をしている。当時無名のマイクは中古のマルチトラックレコーダーを駆使しまくり壮大なシンフォニーを完成させた。
(現在は3000回以上ででギネス申請を出しているアーティストがいる)

3.世界で最初期のマルチプレイヤー
合計28種類の楽器が使われているが1部分にでてくるドラムとフルートとコーラス以外は全てマイク・オールドフィールドが演奏している。完璧な独りよがり作品。楽器も安く借りれる物を集めた。今でいう宅録のハシリである。特筆すべきはシンセサイザーは一切使わず、シンフォニックな音作りをしていること。

4.アルバムリリース時本人は20歳
アルバムリリースはマイクが20歳になった1週間後。録音時は19歳という若さ。
そして、この曲の構想は16歳の頃から膨らませていたという根っからのアーティストであり天才である。

5.Virgin Records 設立第一弾作品
今現在飛行機等も飛ばしているヴァージングループ。実業家として有名な会長のリチャード・ブランソンが20歳の頃に出した中古レコード屋がその原点。リチャードはちょうどスタジオを購入したばっかりで、そこのエンジニアであったサイモン・ヘイワースとトム・ニューマンは、マイクのデモテープに関心を示しリチャードに紹介をする。リチャードは音楽スタジオと録音機材を無料で1週間貸し与え、その後記念すべきヴァージン・レコードレーベル第一弾として、マイク・オールドフィールドのデビューアルバムがリリースされることとなる。

6.映画『エクソシスト』の大ヒット
リリース後数ヶ月は英本国でマニアックなファン層に受けていただけだったが、12月に映画『エクソシスト』のテーマ曲として取り上げられるや否や本国だけでなく世界中で瞬く間に大ヒットすることになる。
特にアメリカでは、1974年のグラミー賞最優秀インストゥルメンタル作曲賞を受賞した。

しかし映画ではクレジットこそされているが、マイク自身は演奏・編集には一切関わってなく、25分強の曲のオドロオドロしい部分だけを抜粋した5分弱のスコア(譜面)が創られ他人が演奏したものが使われている。
この件に関してはマイク自身が今現在でもかなり憤慨しているが、アメリカで売れたのもこの映画のおかげでもあるとして訴訟には至っていない。

■曲目解説

アルバム丸ごとが組曲的な構成になっており、2003年に完全再録された際には細かくサブタイトルがついたので、それを基にご紹介しましょう。

Tubular Bells Part1(チュブラー・ベルズ 第一部)25’33”

Introduction 5’50”
冒頭はあの有名で印象的なフレーズ。エクソシストですね。不安な感じにさせる独特の15/8拍子(7/8+8/8の繰り返し)にピアノ、グロッケンシュピールのユニゾンが冷たさを醸し出しています。その後グルーヴ感のあるベースや複数の楽器が重り、ソロギターのあと太陽が昇ってくるようなイメージを思い起こさせる展開になる。イングランドの片田舎の夜明けを連想させる描写となっている。

Fast Guitars 1’00”
ハードなギターソロ。攻撃的でロック的。

Basses 0’46”
大地を這うようなリズムとベース。かなりエレクトリカル。

Latin 2’18”
一転、アコースティックで神秘さを伴い、大空に飛び立とうかというようなパート。音数が最小限でシンプルだがアルバムの中でも1、2を争う美しいメロディー。

A Minor Tune 1’21”
前節のメロディーがそのままマイナー調に美しく転調

Blues 2’40”
リズムがシャッフルになりブルージーで哀愁が漂い人間臭いパート

Thrash 0’44”
鞭を打つような激しいギターのカッティングと変拍子なリズムがかなりサイケデリック

Jazz 0’48”
ジャジィーなエッセンスが空間を感じさせる

Ghost Bells 0’30”
教会の鐘の音が高らかと響きPart1の後半へ移っていく

Russian 0.44
物悲しいアコースティックギターが静寂を創っていく。

Finale 8’36”
Part1のエンディング。間違いなくこのアルバムのハイライト。
ミニマルミュージックの極みともいえるギターとベースの延々続くユニゾンに、ラヴェルのボレロを彷彿させるような、楽器が重なり合っていく展開は圧巻だ。
また、各楽器が入る前に楽器を紹介するアナウンスが入るのもおもしろいアイデア。
そして最後の楽器がこのアルバムタイトルになるチューブラーベル。時代の技術ともいうべきか金管楽器特有の残響音が不協和音となって響いてしまっているのは愛嬌にしておこう。
この中のギターパートで、おもいきりミスっているのはわざとかな?

以下、クライマックス部の楽器アナウンス

    • Grand Piano
    • Reed and Pipe Organ
    • Grockenspiel
    • Bass Guitar
    • Double Speed Guitar
    • Too Slightly Destorted Guitars
    • Mandolin
    • Spanish Guitar and Introducing Acoustic Guitar
    • plus …. Tubular Bells !!

Tubular Bells Part2(チュブラー・ベルズ 第二部)23’17”

Harmonics 5’21”
Part1よりもトラッドでアイルランド音楽などの民族音楽の影響を感じる美しいギターアンサンブル。Part1の「Final」と並び人気の高いパート。

Peace 3’22”
アコースティクギターの落ち着いたメロディーラインがとても癒しを与えてくれる。

Bagpipe Guitars 3’07”
アイルランド、スコットランドの民族楽器バグパイプとギターのシンフォニー。しっかりと地に足をつけているように力強いパート。

Caveman 4’33”
Part2のハイライト。唯一まともにドラムが入っているロックなパート。またマイクのギターも最高にロックなカッコイイソロが聴ける。しかし、Caveman=原始人というサブタイトルが示す通り、そんな方達が咆哮をしているかのようなヴォイス(歌?)が入る。これが、ただのロックにさせないマイクのセンスであろう。

Ambient Guitars 5’09”
そしてまた静寂が訪れ、包み込むような優しいギターアンサンブルが聴ける。

Hornpipe 1’39”
そしてアルバムの最後は今までの壮大さとは打って変わりフォークダンス大会。フレーズが徐々に速くなっていき最後の最後は超絶高速ギター&バイオリンで終わる。

■あとがき

聴き応えがあり壮大で爽快な作品でとてもエクソシストのようなオカルトな印象は実はどこにもない。
前回取り上げたドナルド・フェイゲンは、完全完璧な音楽を創るといった意味で各楽器のスペシャルな人間を採用していたが、マイク・オールドフィールドは自己で表現することに拘っている。同じ完璧主義者でもスタイルの違いがあるということがうかがえる。
昔聴き込んだ理由は、18、9歳の若者が1973年当時シンセサイザーなど電子楽器を使わず予算のない中独りででここまで創り上げることができたのかの理由を知りたいからに他ならない。
その後マイク・オールドフィールドはヴァージンの意向でポップミュージックで大ヒットも出すが、ヴァージンと決別以降、現在に至るまで「チューブラー・ベルズ」のようなクリエイティビティなアンビエントミュージックをたくさん創り出している。ジャンルを超えた天才だ。まさにアーティスト。
そしてもう一つ、様々な楽器を演奏できるマルチプレイヤーだが彼の特徴は超人的にギターが上手いことである。カッティングはピックで弾くがソロは全て指で弾くスタイル。ケルトなどアイリッシュフォークに根ざしたスタイルで恐ろしい位のフレーズを弾きまくる。ジェフ・ベックと同類の超人ぶりなのだ。

「チューブラー・ベルズ」バリエーション

マイク・オールドフィールドはこの作品に関してリマスター、リミックス、リレコーディング、シリーズなどその後多くのバリエーションを発表している。(オリジナルは除く)今から聞くのであれば2009年版のリマスターがお勧め。
オーケストラ版
  •  The Orchestral Tubular Bells(1975年) ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるライヴ、マイクはギターを演奏)
シリーズ作品(続編 同じような構成だがメロディー、フレーズが異なる)
再録音版
  • Tubular Bells 2003 (2003年、本作発売30周年で忠実に再現したもの)

リマスター版

  • Boxed版リミックス(1976年、一部アレンジに相違あり)
  • Elements Box
  • Simon Heyworth による1998年リマスター(25th Anniversary Edition, 通常CD)
  • SACDマルチチャンネル(Boxed版の4チャンネルミックス)
  • The Original 1973 Stereo Album Mix(2009年版リマスター)
  • Tubular Bells New stereo mix 2009(一部アレンジに相違あり)
  • 5.1 Surround mix by Mike Oldfield Bahamas 2009(New stereo mixの5.1ch版)
  • Scrapped first mix Spring 1973(一部アレンジに相違あり)

     

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2件のコメント

投稿者: : 2012年7月10日 投稿先 3.Rock(ロック)

 

【Tubular Bells】Mike Oldfield」への2件のフィードバック

  1. 小俣哲弥

    2012年7月13日 at 09:03

    懐かしいねぇ~「チューブラ・ベルズ」、エクソシストのテーマ曲で知ってる方が多いのではないかなぁ。

    新興レーベルのヴァージンがこれ1発でメジャーの仲間入りを果たした記念すべきレコードですね。

    それにしても各ジャンルのライターさん、素晴らしい文章ですね!
    プロ顔負けですよ、マジで。

    サイトとしてもクオリティが高くぜひ続けて頂きたい!!!!

    —-閑話休題—-

    最近、オリジナルアナログ盤の収集にはまってまして….
    ピンク・フロイドの「狂気」もファースト・プレス(ソリッドブルー)持ってます。

    また、直近で手に入れたサイモン&ガーファンクルの「ブックエンド」
    オリジナル英国盤mono ファーストプレス(マトリクス両面1)は
    あまりの音の良さに悶絶しています。

    オリジナル盤はとにかく音がいい!
    過去に国内盤で聞いていてだけにその違いに愕然。

    いくら、sacdやハイレゾ音源だといっても所詮デジタル、0と1ですから。
    人間の脳は騙せませんね。

    アナログ万歳!

     
  2. タバチン

    2012年7月13日 at 15:03

    「狂気」のソリッドブルー・・・(汗)。
    それって、UKのファーストプレスですか???
    メチャ高価なアナログを仕入れましたね〜。。ほぼ毎日家の前に行ってるので、拝まさせてください。ホントは聴きたい!

    S&Gの初期オリジナルモノはmonoだから音質はあまり、、と思ってましたが、マスタリングがいいんですね。ギターの音色も抜群なんでしょうか??

    いやいや〜小俣さん、近々連絡します!!!

     

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