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【TEN】 Pearl Jam

07 5月

 1991年このアルバムの1ヶ月後に発売されたニルヴァーナの『ネヴァーマインド』と並び、アメリカ・ロック・シーンを永遠に変えたパール・ジャムのデビュー作!

Pearl Jam / TEN (1991)

ロックが持つ反骨精神が薄れ誰もが”ロック・スター”を夢見ていた80年代。

世界中のロックバンドが混沌たる時代に突入してしまったそのとき、突如1990年代前半、シアトルを中心として80年代的商業ロックを破壊するかの如く世界を席巻したアルバム。

1回目となる先月では、今現在のお勧め盤を紹介した。2回目となったこの記事で、さて、何処から紹介しどういう方向に持っていくか・・・。悩んだ末、Rock色の強いもので最も田畑らしくいこうと決めた。

それが今回紹介するパール・ジャムの『TEN(テン)』

グランジ・ロックについて

まず、よくグランジ(薄汚れたという意味)と呼ばれるカテゴリーについてだが、この呼称は音楽的スタイルというよりは、このジャンルのミュージシャン達が破れたジーパンにネルシャツなど、ちょっと無精な格好で演奏していたことになぞられてついたカテゴリーということを伝えておきたい。また、従来のMTVを中心とした商業主義ロックに反抗するオルタナティブ・ロック・ムーブメントが90年初頭のシアトルを中心に若者を中心に大流行し、これがグランジ・ロックといわれるようになる。それまでの80年代ロックとは違い、生々しいロックの原点回帰とでもいおうか、荒削りなサウンドと等身大の歌詞が若者の心に抉り込み、91〜95年の短期間に熱狂的信者を産み出す。代表的なアーティストとしてパール・ジャム、ニルヴァーナ、サウンドガーデンなど。

パール・ジャムについて

パール・ジャムは当時のX世代(ジェネレーションX)における若者たちの苦悩の代弁者とまで評されその世代の旗手として位置づけられたシアトル出身のバンド。 ニルヴァーナは内省的で攻撃的な音楽性だが、パールジャムは音楽的にはかなりオーソドックなアメリカンハードロックである。70年代のサザンロック的ダウン・トゥ・アースなものに近くねちっこいグルーヴ感のあるロックを聴かせる。

■デビューアルバム『TEN』

それでは1991年にリリースしたデビューアルバムである本作をご紹介しよう。実はこのアルバムが生まれる(バンドが生まれる)キッカケとなる前日譚があるのだが、原稿用紙10枚分くらいあるのでここでは遠慮しておく。

まず、特徴的なのはVo.のエディー・ヴェダーの声とヘタウマな歌唱法。そしてなにより最大の特徴は歌の内容、つまり歌詞である。当時のアメリカの現実が抱えていた社会の歪みを客観視ではなく、どうにもならないくらい切羽詰まった主観を歌っている。そう、「明日」とか「希望」というものがここにはないのだ。そこにあるのは絶望。その絶望から生まれる11の楽曲でこのアルバムは構成されている。特に彼らの代表曲となる2.3.5.6は必聴!

ただ残念なのは、90年の録音で80年代のサウンドプロダクツの影響を引きずったミキシングとオーバープロデュース。リアルな生々しいさをスポイルしお風呂の中で歌っているように感じるのが唯一のネックでならない。このアルバムとニルヴァーナの「ネヴァーマインド(1991)」の大ヒットにより、ムーブメント全体がダイナミックレンジを強調した荒々しいプロデュース手法に変わっていくエポックな作品なのでしょうがないが。

2009Remix

だが、2009年、ファンが待ち望んだリマスターが登場。

これからこのアルバムを聴くのであれば、間違いなくブレンダン・オブライエンがリミックスを施した2009年ヴァージョンの方を強くお勧めする。

ボーカルはもちろんギター、ベース、ドラム全てが躍動的でタイトでソリッド。

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tracklisting

1 Once
静かな闇夜を感じさせる出だしから激しいリフに転じるハイテンションな楽曲。デビューアルバム1曲目にして狂気と絶望に満ちた連続殺人犯が主人公の歌。Once upon a time I could control myself…(かつて俺は自分をコントロールできたんだ!!)と歌うサビが衝撃的で印象的。

2 Even Flow
歌詞には明確に表現されていないがあるホームレスの男について歌ったもの。折角訪れるチャンスに気付かず蝶を追い払うようにチャンスから逃げてしまうホームレス。再起をかけ人生を踏み出そうと思っても、今度は自分が蝶を追い払ったように、世間から追い払われてしまう。絶望と葛藤がつづく男の話。

3 Alive
自分の人生を母親にめちゃくちゃにされてしまう少年の話し。「それでも生きている・・・」と歌うのは希望ではなく将来への絶望と生きることへの葛藤。この絶望が1曲目の「Once」へ繋がり、この少年は連続殺人犯になっていくのだ・・。しかし曲を聴く限り、良くないことがあったとしても「それでも俺は生きているんだ!」と希望的に聴き取れる(のが救いだが、実はそうでない)。

4 Why Go
ある少女が経験した精神病院での抑留時の絶望の描写を歌にしたもの。ヘザーという名のこの少女は、マリファナを吸ったのがバレたことで施設に抑留され、それを知ったエディが痛ましく後悔後にたたない親と子の対立で生じた不理解を歌にした。この曲には「もっと子供の話を聞けよ。自分自身を開けよ。少しでも子供と一緒に居てやって、信頼してやってくれ。」という想いがこめられている。
でもほとんどの現実は、子どもの話しは聞かず保険会社の策略にハマり子ども達を病院送りにしてしまう。

5 Black
パール・ジャムの代表曲でとても美しいバラード。失恋し絶望の最中を歌ったものなのだが「真っ白なキャンバス」に対して「全ての絵画は黒く塗りつぶされ」とか「まっさらな粘土板」が「傷だらけの刺青」にとか何かと符合していて、歌詞が美しく文学的表現で明が暗になる様を表している。また曲の半ばよりラストまで「Tattooed everything… 」のメロディがピアノでリフレインし、さらにギターソロでもずっとリフレインで続くあたりはさすがだ。もの悲しさが余韻を残す名曲。

6 Jeremy
このアルバムでハイライトとなる楽曲。2つの実話から作られた曲。ある学校でイジメに合いひどく虐待され、家ではネグレクトを受けている少年の話し。ある日彼は英語の授業中に何も言わずにいきなり皆の前で頭を撃ち抜いて自殺してしまう。その描写をエディは「Jeremy spoke in class today」と表現している。直訳すると「今日ジェレミーは教室でうるさかった」となる。親からもクラスの皆からも見放されてしまった悲しい少年の絶望的な話し。特に後半のエディの叫びはこれに呼応するような叫びだ。ベースのジェフ・アメンが作曲したからかイントロ、アウトロとも印象的なベースで始まりベースで終わる。

7 Oceans
ゆったりとした一息する曲。サーファーらしいエディの海をテーマにし、男が潮の流れとともに愛する人のところにまた戻ってくるという風景画を思わせる曲。

8 Porch
中流がなくなり、上層と労働者階級の二極化になるだろうという曲。歌詞はメチャクチャだけど。

9 Garden
幻想的な曲。墓場(Garden)まで歩いていくまでの生きる必要性を問う歌。つまり、みんな死んでしまうのに、生きる意義とは何かをを問いかけている。

10 Deep
ある男が底なしの深ーいところに堕ちていく歌。誰からも救われずずっと堕ち続けていく。

11 Release
エディがこのアルバム中で唯一プライヴェートな領域を歌っている曲。この曲のみアルバムに歌詞の記載はない。エディ自身家庭環境が不安定な家で育った。そんなエディの本当の父親に対する歩み寄りの曲だ。それを力強くゆったりと歌っている。

各曲のレビューだけ読むと、なんちゅーマイナスなアルバムだと感じるが、聴いていただくとそれがなんと不思議なことに「絶望という名の希望」に感じることができる不思議なアルバム。これこそがパール・ジャムの絶大な人気の秘密なのだろうと確信する。

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■その後・・

パール・ジャムはニルヴァーナと競うように、1993年に傑作2ndアルバム『Vs.』を発表。

だが、94年カート・コバーン(ニルヴァーナ)の死と共にグランジムーブメントが衰退。多くのバンドが失速し「グランジ」ムーブメントが急速に過去へ追いやられることになる。その中でパール・ジャムだけは解散も失速もせず圧倒的カリスマと人気を持って活動している。

とても皮肉なことだが、アンチ商業主義的思想であったムーブメントなのだが、グラミー賞受賞、アルバム4枚がビルボード1位、CDセールスの売り上げ最速記録がギネスブックに認定されるなど、瞬く間に社会的・商業的成功をおさめることになってしまった。1990年以降、この20年間の中で最も売れたバンド。それは今でも続いている・・。そう考えるとなんとも皮肉な、また、したたかなバンドストーリーだ。

まだまだ、ギターのマイク・マクレディとストーン・ゴッサードのこととかパール・ジャムの前身のこととか書きたいことが山ほどありますが、マニアック過ぎで読む方が3時間かかることになるので、この辺で。

by タバチン

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投稿者: : 2012年5月7日 投稿先 3.Rock(ロック)

 

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