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サキソフォン・コロッサス / ソニー・ロリンズ

10 4月


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 強引に言い切るとすれば、世に名を成した人物は「天才」と「秀才」の2つに分けられる。「天才」が天性の発露とみるならば、「秀才」は努力の集結といえよう。そのような意味において、ソニー・ロリンズはまごうこと無く「天才」の一人である。20歳当時、かのマイルス・デイビスをして、「既に伝説的で、多くの若いミュージシャンにとっては神様みたいな存在だった」と言わしめたことからもわかる。同じテナーサックス奏者として同時代に活躍した4歳年上のジョン・コルトレーン(マイルスと同年生まれ)とは好対照であろう。 

 そのソニー・ロリンズの最高傑作であるのみならず、モダンジャズ史上に残る傑作として不動の地位を占める「サキソフォン・コロッサス」(通称サキコロ)が録音されたのは、彼が25歳の1956年6月22日。クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテットの一員となった翌年にスタジオ録音されたソロ名義アルバムである。

 ここで少しばかり個人的な話をしよう。高校に進み、部活動で新たに楽器をはじめることになった私は、歌なしであるインストルメンタル・ミュージック(器楽曲)の世界に初めて分け入った。演奏する曲はクラシック、ジャズ、ポップスと多様だったが、趣味的な傾向としてジャズフュージョンに強く惹かれた。(フュージョンという言葉に時代を感じる…) そんな私が初めて買ったジャズアルバムがこの「サキコロ」。朝な夕なと、飽くことなく聴きこんだあの頃が懐かしい。…とまぁそんな理由で、私にとっては想い入れが殊の外深い一枚ということになる。さて、話を戻そう。

 ソニー・ロリンズの「天才」たる所以は、演奏曲に対する分析力と、瞬発的なアドリブの構築力に現れ、それは本アルバムの随所に顔を出す。はじめに奏でられるメロディーでその曲の持つ魅力をぎゅっと掴みとり、アドリブに入るや否やいま手にした曲のエッセンスを自身のヴォイスで瞬間的に組み立ててゆく。その見切りの速さと潔さ、そして築きあげたインプロビゼーション(即興演奏)の孤高なる存在感。つぼにハマった時の彼にかなうインプロヴァイザーはそういない。

 ロリンズを支えるサイドメンも魅力的だ。ころころと転がるメロディアスなピアノのトミー・フラナガン。エッヂの効いた太い音でぐいっとアンサンブルを引っ張るベースのダグ・ワトキンス。歌心を感じさせるドラミングでは他の追随を許さないドラムスのマックス・ローチ。この3人のリズム・セクションが、このアルバムの価値を一層高めている。

<#1.セント・トーマス>
 先行するドラムが刻むゆったりしたカリプソのリズム。それに乗ってサックス、ベース、ピアノの順に音が出てくるところで一気にリスナーの心を掴んでしまう。圧巻はマックス・ローチのドラムソロでテンポアップしたあとのロリンズだ。ミディアムテンポの前半に対して、急激にエネルギッシュになる後半の何たる高揚感。これにぐっと来ないはずがない。

<#2.ユー・ドント・ノー・ワット・ラブ・イズ>
 本アルバム唯一のバラードナンバー。甘さに流されないきりりと引き締まった筋肉質なロリンズが印象深い。デリケートながらもエモーショナルなプレイに惹き込まれる。

<#3.ストロード・ロード>
 ロリンズの奏でるテーマにつづきアドリブに入ったところでピアノとドラムが抜ける。ここでベースのみをバックにスピード感溢れるソロを展開するロリンズに圧倒されるだろう。終始、前へ前へ突き進むダグ・ワトキンスのウォーキングベースが気持ちいい。後半に顔を出すローチの4バース(4小節ずつ交互にソロを取り合う形式)は、ドラムスの持つ多様な顔が見られ、何度聴いても聴き飽きることはない。

<#4.モリタート>
 歌詞がつくと<マック・ザ・ナイフ>と名を変えるスタンダードナンバー。落ち着いたリズムの中で、自在に紡ぎ出される各人のソロが絶妙だ。ロリンズのテナーが持つトーンの豊かさが堪能でき、またトミー・フラナガンのピアノソロの艶やかな響きも聴きどころ。

<#5.ブルー・セブン>
 本アルバム中、聴きやすさに欠ける曲ナンバー1。しかし、実はこの曲こそ最も深く聴き応えがある本アルバム屈指のナンバーといえる。イントロのソロ、そしてそこからバックに回るベースに耳を傾けよう。このテイクはベース演奏が肝である事がわかる。風変わりな曲構成ながら、ロリンズの作曲能力の高さも窺い知れる。

 本アルバムは今さら解説するまでもないド定番かもしれない。多くのジャズリスナーが「あぁサキコロね…知ってる知ってる…」と思うであろうことは容易に想像できる。しかし、定番になるにはそうなる確固たる理由があるのだ。久しぶりにじっくり一曲一曲と向き合ってみてほしい。あらためて気づくことになるだろう。キャッチーさの奥に佇む、ジャズ好きを惹きつけてやまない底深い魅力に…。

 [ライター:三森勝仁(KatsuhitoWeb)]

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Saxophone Colossus / Sonny Rollins (Prestige)

 1.St. Thomas (Sonny Rollins)
 2.You Don’t Know What Love Is (Don Raye, Gene De Paul)
 3.Strode Rode (Sonny Rollins)
 4.Moritat (Kurt Weill, Bertolt Brecht)
 5.Blue Seven (Sonny Rollins)

  ・Tenor Saxophone : Sonny Rollins
  ・Piano : Tommy Flanagan
  ・Bass : Doug Watkins
  ・Drums : Max Roach
                         [Recording Date 1956.06.22]


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1件のコメント

投稿者: : 2012年4月10日 投稿先 2.Jazz(ジャズ)

 

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